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建築と美術の協同・連携

昔から建築というものは絵画や彫刻など美術家の協力を得て、美しく壮麗な空間をつくってきましたが、近代に入ってからはそれぞれ独自の活動を展開しておりました。しかし近年になって、「建築と美術の協同・連携による人間の空間の模索」が再び熱心に追求されるようになったのです。

40数年前、日本としても世界の思潮に答えるため、初めて建設する国立の国際会議場は全工事費の1%前後を美術家との協同の経費に充てることが条件に明記されていました。国立京都国際会館の建築が現代美術との統合にも貢献することが強く期待されていたのです。

建築家大谷幸夫氏は彫刻家である弟の大谷文男氏と相談し、若い美術家たちでA・A・A(Association des Artistes pour l’Architecture)というグループを作りました。大谷幸夫氏はグループでの議論を重視しましたが、それは「限られた機会の経験をできるだけ多くの美術家たちに共有して貰いたい」という期待があったからでした。そして、「厳しい建設スケジュールのもとでの美術家たちとの交流は、何時も不安や捉え難い部分を含みながらも、大変楽しく解放感を味わうことのできる貴重な時間であった。」と回想しており、さらに、「それは美術というものが人間にとってどのような意味を持つのか、その一端が示唆されているからだと思う。」と述べています。

会館を訪れた人々が会議の合間にレリーフやオブジェ、灯り、あるいはラウンジや日本庭園の空間そのものに安らぎや心地よい驚きを感じて下されば、それが「建築と美術の協同・連携」の確かな成果であると言えるでしょう。