国立京都国際会館について > お知らせ > 60周年記念 植彌加藤造園×館長 対談
国立京都国際会館は今年5月に60周年を迎えました。開館当初から建築家 大谷幸夫氏の言葉を守り、日本庭園の管理に携わる植彌加藤造園。当館の館長がその想いやエピソードを伺いました。

左から、植彌加藤造園代表取締役社長 加藤友規氏、国立京都国際会館 館長 増田優一、植彌加藤造園専務 加藤嘉基氏
植彌加藤造園代表: 私は会館と同い年でちょうど還暦を迎えました。父の下で幼いころから国際会館とともに歩んできたことが感慨深いです。
植彌加藤造園専務: 最も印象深いのは阪神淡路大震災後の遮水壁工事(1997年)に伴う庭園復元です。メインホール裏の庭園が一度失われ、貴重な植栽を移植しながら復元するという大工事でした。当時はアネックスホール建設前で、その敷地には各都道府県の県木など多様な植栽が育つ「日本の森」があり、復元時にはそこから植栽を移してくるなどしました。工事後は木々が育ち直し、暗い印象だった庭が光の入る明るい庭へと生まれ変わりました。
植彌加藤造園専務: 芝刈りは会館全体を1巡するのに約1か月かかります。四季それぞれの植栽に対して時期ごとの手入れを行い、その年の天候に合わせた管理ができるのは、年間を通じて一元管理をお任せいただいている利点です。敷き松葉などの冬の作業は茶道の炉開き・初釜のカレンダーに合わせて行っています。
植彌加藤造園代表: 職人は庭の景色の一部であり、私どもはこれを「人文風景」と呼んでいます。ゲストをお迎えする際に職人が技を発揮している風景をあえて見せることは景色づくりの一つの手法と考えています。
増田館長: 兼六園の雪吊りのように、管理の様子を見せることで庭の魅力がより伝わりますね。会館の台杉剪定なども、お客様にとって興味深い光景かもしれませんね。
植彌加藤造園専務: 以前、外国からのVIP来館時に法被・足袋姿で作業を披露したこともありました。来賓の予定に合わせてそういった調整もできますので、ぜひご相談ください。
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左から、敷松葉の作業風景、台杉剪定の作業風景
植彌加藤造園代表: 大谷先生の庭園は先鋭的かつ革新的です。比叡山の借景を生かし、自然と張り合うのではなく調和するという、平安時代から続く日本の庭造りの心を、モダニズム建築の中で体現されました。「庭屋一如(庭と建物が一体)」という考えを、当時すでに実践されていたことが大谷先生の唯一無二のすごさだと思います。比叡山の稜線とイベントホールの屋根の角度を合わせた設計も見事です。
植彌加藤造園専務: 池・橋・建物の直線を揃えた幾何学的な構成も特徴的で、大谷先生の建物をより引き立てるための庭になっています。大谷先生は晩年も毎年足を運ばれ、宝ヶ池公園側からの景色も気にされていました。展望台付近の杉が伸びすぎて比叡山を隠さないよう、今も10年スパンで高さを管理しています。
植彌加藤造園代表: 私たちは大谷先生の言葉と意匠を継承しながら育成管理することを常に意識しています。

比叡山の稜線とイベントホールの屋根
植彌加藤造園専務: 課題の一つは、鳥が種を運んで意図せず育つ「実生木」の管理です。比叡山を隠すほど茂ってしまっている箇所もあり、計画的な伐採が必要です。あくまで「森」ではなく「庭」としてはぐくむことが大切です。
植彌加藤造園代表: 木は人と違い際限なく大きくなります。大谷先生の意図とは異なる植栽であっても、大きくなるとあたかも元からそこにあったかのように見えてしまうこともある。庭園を守るための伐採は不要な殺生ではなく、必要な管理です。昔話の「おじいさんは山へ芝刈りに」ではないですが、里山が護られてきたのも適切な人の手があってこそです。
増田館長: 森も適切に管理されなければ死んでしまう、まさにそうですね。
植彌加藤造園代表: さらに重要なのは周辺環境も含めて景色をなす意識です。国際会館は圓通寺の眺望景観を守る京都独自の「京都市眺望景観創生条例」によって、比叡山の借景が守られています。会館単体ではなく、周辺環境も含めて守り続けることが100年先へ繋ぐ鍵だと思います。
増田館長: 比叡山の稜線が守られてこそ、この庭園の価値が輝き続ける。庭園を守りながら、その価値を広く伝えていくことが大切ですね。
